「暑さ寒さも彼岸まで」と言いますが、伊陸の秋は、朝晩は涼しく日中も過ごしやすくなってきました。そんな「秋分の日」の9月23日(金)に稲刈りのお手伝いをしました。
 伊陸の田んぼでは稲刈りが着々と進んでいます。近年ではコンバインによる稲刈りが主流になり、「稲木(いなぎ)」に刈り取った稲を掛けて天日干しする「ハゼ掛け」をする農家さんは少なくなりました。「ハゼ掛け」(稲架掛け・ハサガケ)は、湿度の低い秋の日差しの下で稲を天日干しをすることでアミノ酸と糖の含有量が高くなり、稲を逆さまにすることで藁の油分や栄養分・甘みが最下部の米粒へ下りて栄養とうまみが増す、と言われています。しかし、自脱型コンバインに比べると工程が増え、時間も労力も大幅に多くなるので農家さんの負担は計り知れません。高齢になり「ハゼ掛け」をやめた話もよく耳にします。

 今回お手伝いさせていただいた藤嶋さんは、毎年「しめ飾り」を作っていらっしゃいます。ちなみに、毎年お正月に我が家の玄関に飾っているのは、藤嶋さんが作られたしめ飾りです。しめ飾りを作るためには藁が必要です。その為に今も「ハゼ掛け」を続けていらっしゃいます。この日の稲刈りは、知人などに声をかけてくださり総勢8名での作業でした。私にとって今回の「ハゼ掛け」作業は20年以上ぶりでした。「これだけの人がいればそんなに時間はかからないはず。」なんて思っていた私は甘かった😱「稲を刈る」「稲木を組む」「刈り取った稲を移動させる」「稲を稲木に掛ける」‥‥作業工程がたくさんあり、休憩なしで8人で2時間弱かかりました。昔は稲を刈るのも稲を縛るのもすべて手作業だったことを思うと、どれだけ重労働で大変だったか‥。そんな昔の人の苦労と経験・知恵が今の便利さに繋がっているのだとしみじみと感じました。改めてお米一粒の重みを感じ、大事にすることに気付かされました。

「稲木」にきれいに掛けられた稲に達成感を感じます

 
 

 作業後、藤嶋さんが用意してくださったお弁当をみなさんと一緒にいただきました。今回「ハゼ掛け」初体験の若者は、すぐには食べられないほど疲れていましたが、農家の方々の苦労をほんの少しでも知ることができていい体験ができたようでした。
 みなさんとお喋りをしながら秋空の下でいただくお弁当はとても美味しく、これぞ農作業の後の醍醐味です。

 お弁当を食べながら昔ばなしに花が咲いていると、「珍しいものを見せてあげよう。」と藤嶋さんが自宅から持って来られたのは「二股になった竹」と「卵の中にもう一つ卵が入っていたチャボの卵」でした。

 「希少な物」の例えとされる『二股竹』。昨年、藤嶋さんの山で発見され、新聞の記事にもなったそうです。藤嶋さんは二つともきれいに乾燥させて保管されていました。『二股竹』を見たのは「生まれて初めて。」だそうで、「たくさんの人に見せちゃげたいんよね。」と言われました。少年のような、好奇心に満ちた瞳で話される藤嶋さんに、人生を謳歌する姿勢を見せていただいた気がしました。
 様々な体験が詰まった貴重な一日となりました。