4月7日(日)、氷室亀山神社で「伊陸天神祭」がありました。
 毎年4月の第一日曜日に開催される、菅原道真を祀る祭事で、約180年前に五穀豊穣を願い始まった伝統行事です。牛が主役の珍しい祭りで通称「牛天神」とも呼ばれています。(菅原道真の生誕が丑年、薨去日が丑の日だったことに由来すると言われています。)
 
 社殿で御神体を御網代輿に移す神事(降神の儀)が行われ、それに続いて御神幸行列が神社から約400m先の御旅所までの参道を往復します。行列は稚児が騎乗したお先乗り馬が先導し、約80名の氏子が、旗、指物、大小筒などの奉物を捧げ、絢爛豪華に着飾った寄進牛が御網代輿を引き、子ども御輿と共に練り歩きます。そして最後は、餅まきでフィナーレを迎えます。
 江戸時代より戦時中も絶やすことなく受け継いできた「伊陸天神祭」ですが、御神幸行列と餅まきは新型コロナウィルスの影響で中止を余儀なくされ、今回5年ぶりの復活となりました。

 5年ぶりの本格的な「伊陸天神祭」でしたが、地区内外から多くの方が訪れとても賑わっていました。御神幸行列は本殿での祭典終了後に出発でしたが、「ふるさと物産展」で買い物をされる方や、牛と一緒に写真を撮られる方など早くから賑わいを見せていました。
 牛や馬は祭りの様子に慣れさせるために早くから会場に入り、着飾る準備をしたり散歩をさせたり‥。そんな様子がとてものどかで癒されました。

 かつては洋風食習慣の一般化とともに肥大牛を寄進する機運が高まり、昭和40年代には寄進牛の数は数十頭にまで上り、抽選で行列の順番が決められるほどでした。当時は、お祭りの後に臨時の家畜市場が開かれ、関東方面から買い付けに来ていたそうです。農作業の機械化に伴い寄進牛の確保が難しくなり、現在では近隣の町から1頭のお先乗り馬と2頭の寄進牛を借りて斎行されています。

 道真公の御神体を社殿から御網代輿に載せ御旅所まで寄進牛がお連れし、御旅所で春の景色を楽しんでいただいた後再び社殿までお連れする‥‥そんな菅原道真公の春の遠足ともいえる「伊陸天神祭」(こんな言い方をするとバチがあたるでしょうか?!)が、伊陸を活気付けてくれたように思います。

 柳井市の地域ブランド「きんさい柳井」にも認証されている「伊陸天神祭」が、これからも地域の伝統行事として守り続けられることを願っています。